歯周病と喫煙
2025年6月14日
こんにちは。歯科医師の大石です。
タバコと歯周病の関係、実は思っている以上に深いんです。喫煙は、歯周病をただ悪化させるだけでなく、発症リスクを高め、治療の邪魔までする、まさに「三重苦」をもたらします。
喫煙が歯周病に与える影響
喫煙は、歯周病の発症リスクを飛躍的に高めます。非喫煙者に比べ、喫煙者は歯周病にかかるリスクが2倍から9倍も高まると言われています。特に、1日10本以上の喫煙を10年以上続けている方は、そのリスクがさらに高まる傾向にあります。
なぜ喫煙がそんなにも歯周病に悪いのでしょうか?主な理由は以下の通りです。
* 血行不良を引き起こす: タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液の酸素運搬能力を低下させます。これにより、歯ぐきへの血流が悪くなり、酸素や栄養が行き渡りにくくなります。歯周組織は酸欠状態になり、抵抗力や修復力が落ちてしまうんです。
* 免疫力を低下させる: 喫煙は、体を守る免疫細胞の働きを弱めます。歯周病菌と戦う白血球の機能が低下するため、感染に対する抵抗力が落ち、炎症を抑える力も弱まります。
* 口の中の環境を悪化させる: タバコのヤニは歯にこびりつき、歯周病菌がつきやすい環境を作ります。また、唾液の分泌量も減るため、口の中の自浄作用が低下し、細菌が繁殖しやすい状態になってしまうんです。
* 自覚症状が出にくい: 喫煙による血行不良は、歯ぐきの炎症や出血といった初期症状を隠してしまうことがあります。そのため、歯周病がかなり進行するまで気づかず、治療の開始が遅れてしまうケースも少なくありません。
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。喫煙者は非喫煙者に比べて、この歯の喪失リスクも著しく高いことがわかっています。
治療への影響とインプラント
喫煙は、歯周病の治療効果も大きく損ねます。血管が収縮しているため、治療で除去された歯周病菌から回復するための治癒反応が鈍くなり、せっかくの治療効果が得られにくくなるんです。手術後の傷の治りも遅く、再発のリスクも高まります。
特にインプラント治療を検討している方は要注意です。喫煙者はインプラントが骨に結合しにくいだけでなく、インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)になるリスクも高く、インプラントの脱落率が非喫煙者よりも有意に高まることが報告されています。
禁煙がもたらすメリット
しかし、希望もあります。禁煙は、これらの悪影響を大きく改善します。禁煙を始めると、数週間で歯ぐきの血流や免疫機能が正常に戻り始め、健康な状態に近づいていきます。歯周病にかかるリスクは徐々に低下し、5年から10年後には非喫煙者と同じくらいまで改善すると言われています。
治療と並行して禁煙すれば、歯周組織の状態は劇的に改善し、治療効果も格段に高まります。禁煙は、歯周病の予防、進行の抑制、そして治療の成功に不可欠な要素なのです。
まとめ
喫煙は、歯周病の発症から進行、治療の成否、そして歯の寿命にまで深刻な悪影響を及ぼします。口腔内の健康を守るためにも、禁煙は非常に重要です。もし喫煙されているのであれば、ぜひ禁煙を検討してみてください。
当院では歯周病治療を行っております。ご相談お待ちしております。