なぜだらだら食べはダメなの?
2025年7月14日
ブログを読みに来ていただきありがとうございます。歯科医師の鈴木です。
今回は「なぜだらだら食べはダメなのか?」
についてお話しさせていただきます。
その前に歯の健康を維持するために「脱灰(だっかい)」と「再石灰化(さいせっかいか)」という二つの重要なプロセスを理解する必要があります。
脱灰とは、歯の表面のエナメル質から、カルシウムやリン酸といったミネラル成分が溶け出す現象のことです。
⭐︎原因⭐︎
- 酸の生成: 食事をすると、口の中にいる虫歯菌(ミュータンス菌など)が食べ物に含まれる糖分を分解し、酸を作り出します。この酸によって口の中が酸性になり、歯のエナメル質が溶け始めます。
- 酸性の飲食物: 炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘類、酢を使ったものなど、もともと酸性の強い飲食物を摂ることでも脱灰が促進されます。
再石灰化とは、脱灰によって溶け出した歯のミネラル成分を、唾液が再び歯に取り込み、修復する自然なプロセスです。

⭐︎メカニズム⭐︎
- 唾液の働き: 唾液には、カルシウムやリン酸といったミネラル成分が豊富に含まれています。食後、口の中が中性に戻ると、唾液中のこれらのミネラルが歯の表面に再び沈着し、溶け出したエナメル質を修復します。
- 酸の中和: 唾液には酸を中和する働き(緩衝作用)もあり、歯が酸にさらされる時間を短くする効果もあります。
- 重要性: 再石灰化は、歯を虫歯から守るための自己修復機能であり、この働きによって、初期の虫歯であれば削らずに治ることもあります。
脱灰と再石灰化のバランス

私たちの口の中では、食事をするたびに脱灰が起こり、その後、唾液の働きによって再石灰化が起こる、というサイクルが繰り返されています。
- 健康な状態: 脱灰と再石灰化のバランスが保たれている状態です。食後の酸性状態から、唾液によって速やかに中性に戻り、溶け出したミネラルが十分に補給されることで、歯は健康を維持できます。
- 一般的に、食後約30~40分程度で口の中は中性に戻り、再石灰化が始まると言われています。
- 虫歯の進行: このバランスが崩れ、脱灰が再石灰化を上回る状態が続くと、歯のミネラルが失われ続け、最終的に歯に穴が開き、虫歯へと進行します。
よって「ダラダラ食べる」習慣は、口の中が常に酸性の状態になりやすく、再石灰化が追いつかなくなるため、虫歯のリスクを高めます。
再石灰化を促進する方法
再石灰化を促進し、虫歯を予防するためには、以下の点に注意することが大切です。
- 規則正しい食生活
- 間食を控える: 食べる回数を減らし、口の中が酸性になる時間を短くすることが重要です。間食をする場合は、時間を決めて1日に1~2回程度に留めましょう。
- ダラダラ食べない: 食事や間食は時間を決めて摂り、長時間にわたって食べ続けることは避けましょう。
- よく噛む: よく噛むことで唾液の分泌が促進され、再石灰化に必要なミネラルが供給されます。
- 糖分を控える: 虫歯菌のエサとなる糖分を多く含む食品や飲料の摂取を控えましょう。特にアメやキャラメルのように長時間口の中に残るものは注意が必要です。
- 再石灰化を助ける食品を摂る: カルシウムやリンを多く含む牛乳、チーズ、ナッツ類は歯を強くします。ビタミンA(緑黄色野菜など)はエナメル質を健康に保つのに必要です。チーズは口の中をアルカリ性に傾ける効果もあります。
- 適切な口腔ケア
- フッ素の利用: フッ素は再石灰化を助け、歯質を強化する効果があります。フッ素配合の歯磨き粉や洗口液の使用、歯科医院でのフッ素塗布は非常に効果的です。フッ素が歯に取り込まれると、より酸に強いフルオロアパタイトという構造が作られます。
- キシリトール: キシリトールは再石灰化を促進し、プラークの付着を防ぐ効果があります。キシリトール入りのガムなどを利用するのも良いでしょう。
- 丁寧な歯磨き: 毎日の丁寧な歯磨きでプラークを取り除くことが、虫歯菌の活動を抑え、脱灰を防ぐ基本です。
- 唾液の分泌促進:
- 唾液腺マッサージ: 唾液腺をマッサージすることで唾液の分泌を促せます。
- 水分補給: 水分をしっかり摂ることで、唾液の分泌を助けます。
- よく噛む食事: 食物繊維の多い野菜などをよく噛んで食べることも唾液の分泌につながります。
- 定期的な歯科検診:
- 歯科医院で定期的に検診を受け、初期の脱灰を発見してもらうことや、フッ素塗布などの専門的なケアを受けることが大切です。
このように、歯の脱灰と再石灰化は常に口の中で行われている現象であり、虫歯予防のためには、再石灰化を促進し、脱灰を抑える生活習慣を心がけることが重要です。



